アメリカ永住権を求める人間ドラマ

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【正義のゆくえI.C.E.特別捜査官】(Crossing Over) 2009年に公開された映画ですが、I.C.E.捜査官とはいったいどのような仕事なのでしょうか?!

I.C.E. Immigaration and Customs Enforcementです。アメリカ合衆国移民・税関捜査局、2001年の9.11テロ事件を受けて2003年に設けられた組織です。この捜査官はアメリカに違法で滞在しているアメリカ市民権を得ていない人を取り締まることが仕事です。この映画でI.C.E.特別捜査官を演じるのは主役のハリソン・フォード。アメリカの移民社会の葛藤を扱っているヒューマン映画なので、いわゆるハリソン・フォードの演じていた映画を想像すると、いつもと違うハリソン・フォードになっています。そしてハリウッドを代表する大スターのハリソン・フォードがメジャーでもない作品に出演したことでも話題になりました。ハリソン・フォードはこの脚本に注目したからこそ、メジャー作品ではないこの作品に出演しました。何人もの家族が出てくるので、ハリソン・フォードの特別捜査官としての人物像は、とても控えめな描写になっています。

映画のメガホンを撮った監督ウェイン・クラマーは脚本も担当していますが、監督自身もアメリカ生まれではなく南アフリカ生まれの白人で、アメリカに移民して帰化しています。アメリカ生まれではないからこそ、この題材を扱えたともいえるでしょう。

あらすじ

カリフォルニア州ロスアンジェスルス。ロスアンジェルスには、アメリカンドリームを追ってやってきた若者や、自由の国を求めて家族で移住してきたり、東洋と西洋が交差しているあらゆる人間が集まってくる街です。

市内にある港町のサンペドロ。ここサンペドロにはI.C.E.(移民・税関執務局)の拘留所には、捜査官たちによって逮捕された不法滞在者などが移送されてきます。

I.C.E.捜査官マックス・ブローガン(ハリソン・フォード)は自分の良心から、容疑者を気遣うことが多く、逮捕した不法滞在者の健康を気遣って拘留所にも足を運びます。同僚たちからは、仲間からは処分が軽すぎて甘すぎるとも批判されることもしばしばありました。

ある日、マックスたち捜査官達は不法滞在者を取り締まるために、市内の縫製工場の一斉捜査に踏み切りました。。そこで検挙されたのは、メキシコから国境を越えてきた女性のミレヤ(アリシー・ブラガ)です。ミレヤはI.C.E.捜査官に捕まってしまいます。ミレヤは仕事先で検挙されましたが、子どもは知人に預けて仕事に来ていました。。このまま自分が捕まってしまえば、強制送還になり子どもを残したまま追い出されてしまいます。

ミレヤは捜査官マックスに助けを求めますが、マックスは部下たちに人道的すぎて甘すぎると言われていたこともあり、ミレヤから手渡された住所を捨ててしまいます。

ミレヤには、即強制送還という処分が下りました。ミレヤの処分を知ったマックスは昼間ミレヤと交わした会話を忘れることができず、夜中に縫製工場に戻って彼女からの渡されたメモを探します。そしてそのメモを頼りにして、ミレヤが預けていたミレヤの子どもホアンに会うことができたマックスはホアンを保護して、自分の仕事が休みの日に自分の車で保安をメキシコへと送り届けるために向かうのでした。

マックスはミレヤの両親から話を聞くと、強制送還されてメキシコに戻ったミレヤは子どもホアンのことが心配で、マックスがホアンを連れてメキシコへ来る前の晩に一人でアメリカへと向かったばかりということでした。マックスはアメリカに戻って、ミレヤの行方を調べますが国境で捕まったという情報はないため心配していますが、そうすることもできず、どうすることもできない自分自身に苛立ちを覚えているのでした。

プロのミュージシャン志望で、夢を追いかけて南アフリカからLAにやってきたギャビン(ジム・スタージェス)は、コネでユダヤ人学校の講師という仕事を得ることができました。しかしギャビンは本当のユダヤ教徒でもなく、当然ながらヘブライ語もわからないギャビンです。でも、宗教関係者と認めてもらえれば永住ビザの【グリーンカード】を手にすることができるのです。そこで、ギャビンはまず【グリーンカード】(永住権)を獲得すること優先させて生活を安定することを第一に考えました。そして生活が安定してから、自分がしたい音楽の世界に入ろうと考えています。

一方ギャビンの恋人クレア(アリス・イヴ)は、オーストラリア出身の女優志望です。実際はオーストラリアで1~2回エキストラとして出演したぐらいのキャリアしかないため、当然ながらアメリカでの労働ビザは下りません。クレアはハリウッドで成功してハリウッド女優になることを目指しています。ようやくアメリカで、主役級のチャンスを得ることが出来たクラアですが、それには条件がありました。条件は労働ビザを得ることです。なんとしてもチャンスをモノにしたいと焦ったクレアは、労働ビザの偽造を頼むことにしたのでした。

もしも、労働ビザの偽造がばれてしまえば、10年間アメリカに入国することは出来なくなります。偽造ではなく、できれば本物の労働ビザをとりたいクレアは、入国管理課を訪れますが滞在延長の申請書は受理すらされていないといいます。どうにも苛立ちを隠せないクレアは、入国管理かからんろ帰り道で自動車事故を起こしてしまいました。しかも自動車事故を起こした相手は、なんと移民判定官のコール(レイ・リオッタ)でした。

クレアから状況をを聞いたコールは、彼女の弱みを見抜きます。そして偽造することはできないけれど、経歴を偽って申請すれば何とかするというのでした。そして何とかしてあげる条件は、申請が降りる2ヶ月間は彼女の身体を自由にすること。これがコールがクレアに出した条件でした。もしコールからの申し出を拒めば、自動車事故の処理もしなくてはなりません。彼女はコールの申し出をYESと受けるしか他に道はありませんでした。コールがクレアの身体を堪能して満足した後に、バスルームで1人すすり泣くクレアがそこにいました。

高校生タズリマ(サマー・ビシル)はバングラディシュ出身です。タズリマ3歳の頃に、バングラディシュから両親に連れられてアメリカにやって来ました。タズリマの下には、妹と弟がアメリカで生まれているので妹と弟にはアメリカの市民権があります。

タズリマはイスラム教徒なので、いつもヘジャブ(ベール)を着用しているとてもまじめな少女です。ある日学校では、9.11に関する論文を発表する授業がありました。

タズリマの論文は学校に波紋を広げました。論文の内容は、9.11事件のテロの犯人を人間扱いしないことへの疑問です。テロを起こした方法は間違っていた。しかし、彼らの目的は主張だった。テロを起こさなくては主張を聞いてもらえなかった。9.11の実行犯をマスコミは殺人鬼のような扱いをしているが実行犯も人間扱いするべきだ。テロという手段は間違っていたけれど、今までは誰も彼らの声を聞かなかったのに、9.11の事件から世界は聞くようになったと発表します。そしてその発表はクラス中から非難を受けることになりました。もちろんクラスメイトは彼女の話を全く聞こうとはしませんでした。

その日の夜に、タズリマの家にはF.B.I.とI.C.E.の捜査官がやってきた。学校の先生がタズリマをテロを指示した危険分子だと通報したからです。タズリマの弟と妹はアメリカ生まれなので市民権を持っていますが、3歳でアメリカへ来たダズリマと両親は不法滞在者です。家族を代表してタズリマがこの場で捕まれば、両親は見逃すことを約束すると言われたタズリマは、一人拘留施設へと向かうのでした。危険分子という通報で逮捕されましたが、逮捕の表向きの理由は不法滞在でした。

デニス(アシュレイ・ジャッド)は移民弁護士で移民判定官コールの妻です。デニスは人道的な弁護士で、不幸な境遇に陥っている不法移民に対して手をさしのべる人権派弁護士です。人権派弁護士として、タズリマ達家族をなんとかしてあげようと努力しますが、F.B.I.とI.C.E.は,ダズリマに対して厳しい態度で臨んでいます。

デニスは訴訟大国アメリカの人権派弁護士ですが、タズリマのケースを法廷に持ち込むことさえできません。そして、3つの選択肢をタズリマの家族に対して示すことしかできませんでした。1つは家族全員でアメリカから退去すること。2つ目は強制退去になる可能性が高いが裁判で争うこと。そして3つ目はF.B.I.の司法取引を受け入れてで、タズリマと両親のどちらかがアメリカから離れる。もう一方の親と弟・妹はアメリカに残ること。

タズリマは両親と3歳でアメリカに渡ってきたということもあって、母国語を話すことは出来ません。はせるのは英語しか話すことは出来ないのです。そしてタズリマがアメリカから去る時には、I.C.E.捜査官が立ち会うため、アメリカに残る家族はタズリマに会うことも許されないのです。

家族は3つ目の選択肢を選びます。タズリマと最後の別れを偲ぶ家族でしたが、面会できる時間は長くはありません。「時間です」の言葉で、引き裂かれる家族の姿がそこにはありました。タズリマの母は「いつか、みんなで暮らせるようになるのよ」といい、タズリマは弟と妹をひっかりと抱きしめるのでした。

韓国出身の一家は家族4人でロスアンジェするで暮らしています。この韓国出身の家族は、アメリカ市民権取得式典への出席を目前に控えていました。両親はアメリカの市民権(グリーンカード)を得ることの名誉に大喜びしていますが、それに対して高校生ヨン(ジャスティン・チョン)は両親がそこまで喜ぶ意味が全く分かりません。そしてヨンは、韓国系の不良グループからの誘いを断りきれずに、コリアンタウンのリカーショップに強盗するため一緒に連れて行かれます。

たまたまリカーショップに居合わせたのは、マックスの相棒ハミード(クリフ・カーティス)です。ハミードは持っていた銃で応戦して、不良グループを銃撃してしまいます。

ヨンは店の奥さんを人質に取りますが、ハミードはもうすぐヨンがアメリカ市民権を得て市民権取得式典に参加することを知ったこともあり、自分自身と重ね合わせます。移民の気持ちは移民だからこそ分かるということでしょう。ハミードもイラン出身者で、アメリカ市民権を得ていたのでした。ハミードは自分が市民権取得式典に出席した時のことを思い出して、ヨンを説得するのでした。市民権取得式典に参加したヨンは二度と過ちを犯さないと判断したハミードはわざとヨンを見逃すのでした。

ハミードと兄弟はすでにアメリカ市民権を取得して帰化していましたが、ハミードの父親も次の土曜に市民権を取得することが決まっていました。マックスはハミードからその祝賀会に呼ばれています。祝賀会の場で妹のザーラ(メロディ・カザエ)を紹介されます。ハミードの妹はアメリカで生まれているので、彼女は生まれながらに市民権を得ています。兄弟の中でちょっと浮いている存在です。

祝賀会の翌日ハミードに妹ザーラと妹が勤務するコピー店店長が殺害されて居たいとなって発見されたという連絡を受けます。ハミードはマックスと一緒に遺体安置所へと向かい、ザーラと店長の遺体を確認しますがそこで妻がいる店長と妹が不倫していたことを知ります。そして店長が偽造グリーンカードと免許書を所持していたことを知ります。そしてこの事件に不法移民ビジネスを感じたマックスは、独自に捜査に乗り出すのでした。

女優志望のクレアは恋人のキャビンにグリーンカードのことを伝えます。そしてグリーンカードを手にするために移民判定官のコールに身体を許していることを知り、キャビンは愕然とするのでした。

最初はクレアの身体目的で、グリーンカードという餌を吊り下げていたコールですが妻デニスとの結婚生活よりもクレアとの生活を選ぼうとしてクレアに申し出をしますが、クレアは次第にコールに惹かれて心を寄せていましたが一緒に暮らすことを望みませんでした。コールはクレアにグリーンカードを約束して、別れを告げるのでした。

マックスはハミードがザーラと店長の遺体を確認した遺体安置所の臭いを嫌がって車に置き忘れた上着を洗濯にだしました。その時にザーラがしていたブレスレットを見つけることになりブレスレットをハミードに渡します。ブレスレットは所持品として保管されていなくてはいけないもの。それをハミードが持っていることに、マックスは疑問に思うのでした。

無神論者のギャビンはグリーンカードの申請をしますが、移民判定官に嘘ではなく本当に宗教関係者かどうかを確かめる試験を受けさせられることになりました。ユダヤ教学校に勤務するラビだと、本当は無神論者でいながらラビだと主張するギャビンは、本物のラビの前で祈りを捧げるように言われます。ギャビンは練習の通りに祈りを捧げました。移民判定官に疑われていましたが、本物のラビは移民判定官に彼は本物。と嘘の証言をしてくれます。まさに神の思し召しが与えられたことになりました。晴れてギャビンはグリーンカードを手に入れることができました。

ハミードと店長の遺体と一緒に偽造グリーンカードがありました。そして偽造グリーンカードの中にはクレアのものがあった。しかしクレアはすでに本物のグリーンカードを得ていた。しかし、発行された本物のグリーンカードにも不正があったことがわかります。I.C.E.はクレア不信に思いクレアを詰問すると、クレアは真実を話して、移民判定官コールの不正が発覚してコールは逮捕されました。

韓国移民のヨンは晴れてグリーンカードを取得することになり、式典に出席しています。そのセレモニー会場にはハミードが両親を伴っていました。その場所にマックスが現れます。マックスはザーラ殺害現場の監視カメラにハミードの弟(メリク・タドロス)が映っていたことを知らせます。

ハミードは、実力者でもある父親に、ザーラは恥をかかせるのでザーラを懲らしめる目的で現場に向かった弟ファリードが妹ザーラと店長を殺害してしまい、弟からその後始末を頼まれたことをマックスに伝えます。ファリードはその場で逮捕されました。

I.C.E.捜査官に付き添われてバングラディシュへ送還されるため空港へと向かうタズリマと母親の姿がロスアンジェルス空港にありました。アメリカ人の格好をして2人を哀れな目で見送っている父親の姿がそこにはありました。もし見つかったてしまったら、自分も強制送還になってしまう父親です。2人を見送るために危険を冒して二人を見守っていました。

メキシコとアメリカの国境では一人の死体が通報によって警察官に発見されました。死体の身元はミレヤです。国境を越えさせる越境屋とのトラブルからでしょうか・・・。ミレヤの死という情報を聞いたマックスは、自らミレヤの両親に報告することを決めメキシコへ向かうのでした。